次回公演
ごあいさつ
こんにちは。パンケーキの会です。
2025年4月に下北沢駅前劇場で「旅するワーニャおじさん」と題し、二つの「ワーニャおじさん」を交互上演いたします。
アントン・チェーホフの「ワーニャおじさん」(1898年初演)は今なお世界中で愛されている戯曲です。どうしてこんなにも時代を超えて、国を超えて愛され続けているのか。その戯曲の魅力はどこにあるのか。そんな興味からこの企画は始まりました。
今回は西ヨーロッパの端に位置するアイルランドの劇作家、ブライアン・フリール翻案の「ワーニャおじさん」(1998年初演)と、東アジアに位置する韓国の劇作家ユン・ソンホの「寂しい人・苦しい人・悲しい人」(現代韓国版ワーニャおじさん)(2018年初演)を交互に上演いたします。
二人の作家の視点を借りながら、現代における「ワーニャおじさん」とは?に
劇場に足をお運び頂いた皆様と共に想いを巡らせられたらと思います。
パンケーキの会 企画・翻訳・代表 さこうみちこ
『ワーニャおじさん』
作:アントン・チェーホフ
翻案:ブライアン・フリール
翻訳:さこうみちこ
演出:伊藤毅(やしゃご)
キャスト
猪俣三四郎
内田健介
大原研二
小見美幸
佐乃美千子
藤谷みき
柳内佑介
渡邉りか子
木村亮太
志賀耕太郎
【あらすじ】
ロシア帝政末期。田舎で地所を運営しているワーニャは姪のソーニャ、母親のマリア、乳母のマリーナ、居候のテレーギンと共に暮らしている。そこへ大学教授の職を引退し、都会での暮らしを維持できなくなった義理の兄・セレブリャーコフが若く美しい妻エレーナと共に帰ってくる。そこに環境保護の理想に燃える医師・アーストロフも加わって・・・。田舎生活に馴染めない教授は一家にある提案を持ち掛けるが・・・。
『寂しい人,苦しい人,悲しい人』
作:ユン・ソンホ
翻訳:鄭世奈
演出:早坂彩(トレモロ)
キャスト
平吹敦史
荒井志郎
西本泰輔
佐乃美千子
金聖香
西村由花
猪俣三四郎
【あらすじ】
2018年ソウル。人文社会科学雑誌『時代批評』は時代から取り残され財政的な危機を迎えている。そこに広告業界で働いていたソ・サンウォンが新任の編集長として、美人デザイナー、ペン・ジインと共に編集社の立て直しをかけて赴任してくる。生き残りをかけて新編集長は『時代批評』を長らく支えてきたキム・ナムゴンを筆頭とする職員たちにある提案を持ち掛けるが・・・。
過去の公演の記録
「熊」byブライアン・フリール
×
「熊」byアントン・チェーホフ
(訳:牧原 純『結婚、結婚、結婚』群像社)
二つの「熊」について
劇作家が他の劇作家の作品を翻案するとき、どんなことが起こるのだろうか?この企画はそんな興味から始まりました。そしてその作品を翻訳するとき、さらには演出がついて、俳優が立って、演劇として立ち上げるとき。誰かが持ち込んだ「何か」が作品にどんな変遷をもたらすのか?
それを観客と共有するにはどうしたらいいのか?
この企画はそんなことを考えた結果こんな形になりました。
どのクリエションにも敬意を払いつつ、見に来てくれた方がたと楽しい時間を過ごせるような公演にするつもりです。
『熊』~BEAR~
作:アントン・P・チェーホフ
翻案:ブライアン・フリール
演出:伊藤 毅(やしゃご)
翻訳:さこう みちこ
キャスト
菊池 夏野
山本 陽子
佐乃 美千子
2024年6月7日(金)~6月9日(日)
会場 下北沢 ComCafe 音倉
「熊」作:アントン・チェーホフ 翻訳:牧原 純 リーディングキャスト
6月7日 19:00回 ゲスト 佐藤 滋(青年団/滋企画)×伊藤 毅(やしゃご)×菊池 夏野
6月8日 14:00回 ゲスト 太田 宏(青年団)×伊藤 毅(やしゃご)×佐乃 美千子
6月8日 18:00回 ゲスト 斉藤 淳(劇団俳優座)×伊藤 毅(やしゃご)×山本 陽子
6月9日 13:00回 ゲスト 酒向 芳×山本 陽子×佐乃 美千子
チケットのご予約はこちらまで→https://ticket.corich.jp/apply/316170/
STORY
夫を亡くした悲しみに引きこもっている未亡人エレーナ・ポポーワのもとに、生前の夫に金を貸していたという熊のような男が現れる。男・スミノフは農業銀行に財産を差し押さえられて首の回らない状態。なんとしてもエレーナから貸した金を返してもらおうとするが、、、。事態は思わぬ方向へと転がってゆく。チェーホフ自身「ジョーク」と称し1888年初演当時大ヒットした短編戯曲。アイルランドの劇作家によるその翻案。
ごあいさつ
こんにちは。パンケーキの会です。2回目の企画として「熊」作:アントン・チェーホフ、翻案:ブライアン・フリールを小規模ながら公演として立ち上げることにいたしました。
アイルランドの巨匠ブライアン・フリールは「熊」(1888年初演)を「20世紀の演劇シーンを再構築しようとしたチェーホフの初期の実験的作品」と位置付けました。チェーホフ自身「熊」については多くを語らず、「ジョーク」「フランス風のくだらないボードビル」と非公式には称していたようですが、巨匠フリールはこの作品を「ボードビル/スケッチ(短編)」の転換点と捉え、そのチェーホフ的な演劇性に着目し、「熊」翻案(2002年初演)を手掛けたようです。
実際に会わなくてもライン一本で、繋がったり、ブロックされたり、付き合ったり、別れたりする昨今。
「スケッチ(短編)」という時間のなかで目まぐるしく変化する関係と人物のダイナミズムの渦に引き込まれる「熊」を体感しに、足をお運び頂けましたら嬉しいです。
パンケーキの会
演出
伊藤 毅(やしゃご)
翻訳:さこうみちこ
ブライアン・フリールの「熊」は物語の構造はほとんどアントン・チェーホフの「熊」と変わりがないのですが、その端々のニュアンスの違い、状況の違いが、彼がこの作品の面白さをどこに見出したのかを感じさせてくれます。なんとなくなのですが、私は状況による「熊」と、言葉による「熊」の違いがそこにはあるように感じています。
また、物語の中に出てくる「女性解放運動」という言葉が1888年当初と、2002年と、さらには2024年において違った意味合いで観客に響いているであろうことを思うと、作家の意図しないところで、時代によってこの作品の受け入れられようも変わってくるのではないかとも思いました。2024年において、女性性、男性性をこの戯曲の中でどう訳し、観客に提示していくのか。この難問に、演出の伊藤 毅氏と、女性キャストと共に挑みたいと思います。
出演者
菊池 夏野
この作品に参加することが決まってから、たくさんラブコメ映画を観ています。
というのも、わたしが「熊」に持った印象が「大嫌いだったらはずのアイツにいつの間にか恋に落ちていた」っていうラブコメあるあるじゃん。
だったからです。
王道ラブコメは大体開始30分で主人公たちがキスします。え、いつ好きになってた!?と混乱するものも多くありますが、
短いながらも登場人物の心の移り変わりを丁寧に描けるように、お稽古を重ねていきたいと思っています。
山本 陽子
地面に足をくっつけて、
全力で愉快なお芝居にしたいです。
佐乃 美千子
どうして?こうした?
どうして?
こうなった?
そんな「?」が沢山あるお芝居です。
全然道筋が見えません(笑)。
結果、どうなっていくのか?
右往左往しながら
共演者と、演出の力を借りて
進んでまいりたいと思います。
撮影:ハマリュウノスケ
2024年3月16日、17日
リーディング公演「壊れたガラス」作:アーサー・ミラー
『壊れたガラス』~BROKEN GLASS~
作:アーサー・ミラー
演出:鈴木 アツト
翻訳:さこう みちこ
2024年3月16日、17日
会場 下北沢 ComCafe 音倉
STORY
1938年11月ファシズムが台頭するドイツで、ユダヤ人に対する暴動が起こる。この時、多くのドイツ一般市民はユダヤ人迫害に加担、もしくは傍観していた【水晶の夜】。遠く離れたニューヨーク、ブルックリンで、その新聞記事を読んだ ユダヤ人主婦シルヴィアは衝撃を受け歩けなくなってしまう。治療にあたる医師、ハイマンを通して暴かれるシルヴィア、フィリップ夫妻の秘密とは、、、。変わり行く世界と、分断される社会のなかで、自分らしさに惑う1組の夫婦の物語
出演
佐乃美千子
井上裕朗
宇井晴雄
橘 麦
長弥想士
藤井咲有里
※敬称略
ごあいさつ
「パンケーキの会」立ち上げ公演として、アーサー・ミラーの『壊れたガラス』をリーディングで上演いたします。
この作品はアーサー・ミラーが1994年、79歳の頃に遺作にするつもりで書いた作品だと言われています。実話をもとにしており、実際の出来事から50年以上たって作劇に取り掛かった彼の【想い】に触れることのできる作品だと思っています。執筆当時、世界ではルワンダやボスニアの紛争があり、心を痛めたことが、彼を作劇に向かわせました。
常に世界のどこかで起こっている人道危機が、本当に自分たちとは関係がないと言えるのだろうか?世界と、国と、社会と、コミュニティと、私たちは少なからず繋がっており、影響を受けあっている。「人間は社会的な生き物である」ことの本質的な意味を、今なお問いかけてくる。そんな作品だと受け止めています。
インターネット、SNSの普及で世界を身近に感じられるようになってしまった昨今。「今」この作品を形にしていくことはどういう意味を持ち得るのか、を、模索していけたらと思っています。
パンケーキの会
演出:鈴木 アツト
コメント
アーサー・ミラーのあまり知られていない戯曲『壊れたガラス』を演出する機会をもらえたことは、とても嬉しい。この戯曲は、ヒトラー時代のドイツで起こったユダヤ人に対する差別事件を、ドイツから遠く離れたアメリカに住むユダヤ系の人々が、どう受け取るべきなのか、人間としての誠実さを題材にした物語であると私は捉えている。18、19世紀の国民国家の勃興が、ナショナリズムと排他的行動を生み、それがシオニズムを生み、それが今のガザの悲劇を生み出している。二百年前、ヨーロッパの人々がユダヤ系の人々に投げた石が、まわりまわって、二百年後にガザの人々の頭の上に爆弾を落とすことになったのだ。歴史は繋がっている。でもまず、「人類や世界といった主語を大きくするのではなく、夫婦という小さな景色から歴史を考えよう。」ミラー戯曲から私はそのようなメッセージを感じ取り、この作品に挑みたいと思っている。
翻訳:さこう みちこ
コメント
今回「壊れたガラス」という、巨匠アーサー・ミラーの作品の翻訳に挑みます。6人の登場人物が入れ替わり立ち代わりしながら、ほとんど2人芝居で紡がれるこの戯曲は、1938年の実際の出来事を基に50年程の歳月を経て、1994年に書かれました。彼がこの作品を書いた1994年から見た1938年という時代を、2024年の現代から翻訳するという時間は、私にとって素晴らしく光栄な時間でもあり、根気の要る時間でもありました。
戯曲のセリフにある「世の中の仕組み=システム」が、当時も、そして、「今」も、同じ様相を呈しており、それ故に、現代において尚、多様な切り口で読める戯曲であると思っています。この戯曲が語りかけてくる様々なメッセージが皆様に届きますように。精一杯、翻訳に挑みたいと思います。
出演者
佐乃 美千子
シルヴィア・ゲルバーグ役
この戯曲を読んで、私は、ウクライナやガザの情勢が頭に浮かびました。想像を越えた戦争の陰惨な景色が頻繁に報道されていたあの頃。私自身、情報との距離に意識的にならなければ、普通の生活を送ることが難しくなってしまっていました。
時は1938年、「これは絶対に許容されるべきではない」と自分が壊れそうになりながらも、3000マイルも離れた世界と、自分の人生から、目をそらさずに主張するシルヴィアという女性の強さと、弱さに、あの時の自分が慰められる思いです。素晴らしい戯曲です。是非聞きにいらしてください!
井上 裕朗
フィリップ・ゲルバーグ役
ここ数年アーサーミラーの作品が頻繁に上演されています。現代の我々に呼応する部分が多いのかもしれません。時代や国を超えて色褪せない名作ばかりなのだと思います。
『壊れたガラス』には今回初めて出会いました。他の作品同様、社会的なマクロの視点と個人的なミクロの視点を見事に重ねて、大きな悲劇の始まりを描いています。六人の登場人物のたった数日の日常生活を描くだけでこれほど大きな物語を立ち上げられるものかと、戯曲の完成度の高さに感動しています。
今回はリーディング形式ということで、フルプロダクションとはまた違う難しさがありますが、リーディングだからこその面白さや豊かさを見つけられたらと意気込んでいます。
宇井 晴雄
ハリー・ハイマン役
友人に富山弁が妙だと言われたこともあるけれど、故郷は「自分」をつくる重要な要素だと元日以降、再認識している。自分の属性は逃れようのないものだとして、それとどう付き合っていくのか。受け入れるか、拒否するか、受け入れたふりをするか、憎むか、愛するか、ごちゃまぜの具合もある。もちろん人それぞれ。そもそも異なる属性だと思っていたのに、もっと大きく見れば同じだったり。そんな視点を足掛かりに取り組んでいます。
橘 麦
マーガレット・ハイマン役
読むほどに発見が沢山あり、感動する日々です。でも、その発見の多さに、何か取りこぼしているものがあるのではないかと、日々とても不安にもなります。でも、この不安が、知ろうとする事に繋がり、調べる事に繋がり、学びに繋がり、人を知る事に繋がり、また色々な発見をもたらしてもくれます。
頼もしい座組の皆さんと、まだまだ沢山の発見に出会っていきたいと思います。
長弥 想士
スタントン・ケイス役
名を連ねてる私です。一見すると地味作品ですが、登場人物達は必死。天才作家の到達した境地の作品ですね。オリジナルの新訳で臨みますので、観た方はラッキー!
ゲルバーグの仕事中とかはどんな様子なのか、私はその状況の彼を表す唯一の外部ポジション。
映像作品とかならその役割が複数出るのでしょうが、1人に集約。なら印象に残るかというと存在感は薄。
でも、いないとスパイス足りない。質のいい香辛料になるべく臨みますア゛ー!ア゛ァーー!!明日生きてるか分からんのに!今を精一杯生きなきゃ!ア゛ァーー!
藤井 咲有里
ハリエット役
リーディングで約2時間のストレートプレイを演じる、ということでどれだけ豊かな時間を届けられるかしらと身の引き締まる思いです。
リーディング公演は基本的に大きくは動かず言葉だけで想像していただくので、動ける身体と共に舞台に立つと表現のバランスが難しいんですよね。どのような居方、言葉の扱い方で戯曲に立ち向かうか。アーサー・ミラーが晩年に生み出した「壊れたガラス」という戯曲を今回新訳でお届けできることに武者震いしています!共演者そして演出の鈴木アツトさんと共に思考&試行しながら本番に向かいたいと思います。
皆様のご来場を、こころよりお待ちしております。
写真撮影:ハマリュウノスケ